調布を耕す会でのお菓子作り

“sweet heart”の生まれる場所から

人は誰しも、日々の生活や打ち込むことに楽しさと誇りを持っていることで輝くものです。

自己実現と満足、と言った、ある意味一見深いようだが実は手垢にまみれた観念的表現が陳腐に感じるような、清々しくとても瑞々しい現場を見させていただきました。

sweet heart projectで扱いをさせていただいているお菓子を作っている、東京・調布市の社会福祉法人、調布を耕す会の施設「しごと場大好き」での障がい者の方々の“誇りを持ったお菓子作り”の現場を訪ねました。

「楽しみです」「クッキー作るのが好きです」「疲れることはないんです」

21歳のお菓子作りにいそしむ障がい者の男性Sさんは、目を輝かせて語ってくれました。

この、調布を耕す会の施設「しごと場大好き」では、sweet heart projectの実行委員、パティスリーカメリア銀座の気鋭の実力派若手パティシエ、遠藤泰介さんが指導したお菓子「ブールドネージュ(スノーボール)」作りがすでに軌道に乗っていて、カレントの製造が定着しつつありました。私が訪れた時は、フランボワーズ味、プレーン味、チョコ味はすでに“合格”、抹茶味も“合格”をもらえるようさらに研ぎ澄まそうと、障がい者の方、施設の方の熱意と活気に満ち溢れていました。

「ブールドネージュ」はこれまで多い時は200の注文があり、お菓子作りに2日間、箱詰め作業と合わせ4日間で作業完了、注文への対応も十分なすっかり立派な”パティスリー化”ができています。(2021年4月現在)

(このほかにも、この「しごと場大好き」では、トマトクッキー、チョコココナッツクッキー、レモンココナッツクッキー、ガレット、パルメザンチーズクッキー、にくきゅうクッキー(動物の足の肉球をかたどったクッキー)など、多くのお菓子が作られています)

にくきゅうクッキー

障がい者の皆さんのお菓子作りを支える施設の職員の皆様の熱意と情熱も素敵で素晴らしいのです。

お菓子作りを見守る職員の守屋茉耶(もりやまや)さんは、4人の障がい者の方を指導し「みんなとても前向きで積極的で眼を輝かせて楽しくお菓子作りをしているんです。完成したお菓子が目に見えて量が増えていくのを見て喜ぶ人もいて、そういう姿を見ていると本当に嬉しいんです」と語ってくれました。

また、守屋さんは「皆さん、お給料をもらう時、“やった”という嬉しそうな表情で受け取るんですが、その姿を見るのも嬉しいんです」と、障がい者の皆さんが自分の働き、自己実現がお給料という“形”になることを素直にそしてポジティブに喜ぶ姿にもやりがいを感じると話してくれました。

人が働くこと、自分の努力が実を結んで形になること、このことに喜びを感じ、誇りを持てること、その素晴らしさ、尊さを、調布を耕す会の「しごと場大好き」という場所で感じました。

さらに、施設の職員の佐藤愛さんは「みんなとても前向きにお菓子作りに取り組んでいます。コロナ禍で施設外の場所に行くのは難しいですが、sweet heart projectのご注文で、大企業などの皆さんのお手元に、ここで作ったお菓子が届く、その場面を一緒に見に行きたいと思っています」と語っていました。

作ったお菓子を多くの方々が買ってくれる、しかも、50個、200個と多くが売れる、その場面を障がい者の方々が眼にしたら、世の中で多くの人たちが自分たちのお菓子を喜んでくれて求めて買ってくれて、食べて「美味しい」と言っているところを見たら、どんなに励みになり、自然な自信と誇りを持つことができてどんなに素晴らしい事だろうか、と。

この点はsweet heart projectの活動の今後の大きな課題でもある、と、大変貴重なご示唆もいただきました。

社会福祉法人 調布を耕す会 「しごと場大好き」の施設長、亀田良一郎さんは、sweet heart projectとのかかわりについて次のように語っています。

「著名なパティシエ、遠藤さんにご指導いただき、大変ありがたいです。彼らの障がい特性に適切に応えながら、お菓子の質を上げて、きちんと市場で付加価値を伴って(ある程度の値段の商品として)受け入れられること、そういったことの両立はなかなかマネジメント的にも難しいところもあることは感じています。しかし、このsweet heart projectでそういった難しいところにも道が開けるのではないかと思うのです。

遠藤パティシエによる講習(撮影2020年12月8日)

障がい者支援の立場では、現実的な課題として考えていることは、施設ごとの状況にもよりますが、多くの障がい者施設で、一月当たり5万円のお給料を安定して手にすることを目指しているという現状があります。それは今、障がい者の人たちが、親が亡くなった後に、障がい者年金だけでは基本的な生活の維持が難しい中、年金等のお金と合わせ、グループホーム等を利用して生まれ育った地域で安心して暮らしていく為に少なくとも5万円は必要だという現実の課題があるからです。

sweet heart projectの活動の趣旨、本旨は、まさに亀田施設長のご指摘の課題の解決にもつなげたい、という部分であること、単に気持ちの面のボランティア的な活動ではない、これからの社会のあり方の一分野にも明確に現実的に貢献していかないとならない、とも改めて痛感した、“現場訪問”になりました。

多くの障がい者の方々が、笑顔で誇りを持った日々を過ごすことができますように、と心から思い、さらに活動を続けて行きたいと思いました。

大山 泰
sweet heart project 実行委員
(元フジテレビ報道局経済部長、解説委員)
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