自閉症の子どもたちの才能を開花させるAOAartのワークショップ

“sweet heart”の生まれる場所から

自閉症の方々のアート作品の創造性を社会に伝え、制作を通して自閉症の方々の人格や尊厳を守り、共に生きる社会の構築に寄与する目的で設立された一般社団法人AOAart(エーオーエーアート)。アーティストや経営者、看護師などの主要メンバーで構成され、ワークショップやアートイベントなどを行なっている。

「AOAartは主に日本と北京で、団体としてそれぞれ独立しながら連携して活動しています。障がいに国境はない、というのが私たちの思いです。まずは子どもたちの作品を見てください。」と話す団体理事のアガタサトコさんと向かったのは、流山エルズ(流山市生涯学習センター)。同団体が月に1度開催する、自閉症の子どもたちのアートの才能を引き伸ばすワークショップを見学するためだ。

「完成?やったね!」「いい色合いだね」「次は何を描く?」賑やかな声が響く教室をのぞくと、机の上の画用紙に向かい、絵の具やサインペンを使って思い思いに作品作りをする子どもたちと、保護者やスタッフの笑顔がいたるところで溢れていた。

今日で4回目の参加という幼稚園児は、開始30分で2枚の作品を完成させていた。1枚には着ていたTシャツと同じ、スターウォーズのキャラクター、もう1枚には水色や青色の絵の具を使い、ぶどうや花などのモチーフを描いた。

母親から話を聞くと、園児は感覚過敏なところがあり、幼稚園でも絵の具や糊が手につくのを極端に嫌がっていたそうだ。年中のときに絵を習いたいという本人の希望があり、このワークショップの話を聞き、通いはじめたのだという。
「太陽や空、草、花とか、教室で描いたものをブラッシュアップさせて、家でもいろいろな絵を描くようになってます。今日は最初からスターウォーズを描こうと決めていたみたいです」。

教室に通いながら、出した色を混ぜてさまざまな色ができることもだんだんとわかってきたという園児。2枚目の絵を描いた筆で、おもむろに自分の手や腕に絵の具を塗り始め、母親を驚かせた。スターウォーズのキャラクターになりきって塗り始めたのかもしれない。感覚過敏より園児のアートの力が増した瞬間だった。目を輝かせながら立体物に色を塗る楽しさを体感しているようだった。

逆側のテーブルで黙々と描いていたのは、この日がお試し参加という女児。もともと絵を描くのが好きだったそうで、1枚目は迷いのないタッチで青空の下で猫が遊んでいる様子を描き、2枚目には猫の足跡を描いていた。背景に色を塗る際、画用紙の上側にオレンジ、下側は黄緑色で塗っていたので、「どんなイメージで描いているの?」と声をかけると、慌てて筆を置いて母親のかげに隠れてしまった。
母親経由で解説してくれたのは、「オレンジは夕暮れだそうです。1枚目で日中遊んでいた猫が、2枚目では夕方になったので家に帰る様子を描いたそうです」。

それぞれのテーブルで、保護者とボランティアスタッフがついて声をかけながら作品づくりをしている。本人が「終わり」というと、作品は完成。周囲のスタッフも集まってきて、心からの拍手したり、抱き合いながら口々に絵の出来栄えを褒める。すると、製作者の顔にも満足そうな笑みが生まれ、保護者も笑顔になっていく。

ワークショップに通うようになってその才能が開花し、作品が注目を集めているアーティストがいる。中学1年生から教室に通い、7年目というMIKIさんだ。動物や電車をモチーフにした作品の多くは、sweet heart projectのパッケージとしても使わせていただいている。

別室で1メートルを超える大きなキャンバスに向き合うMIKIさんの描き方は独特だった。
キャンバスの横で母親がスマホの画像を持って座り、MIKIさんはその画像を見ながらキャンバスに向かう。下絵も描かず、一気に左上のキャンバスにペンで描き始めたのは、シマウマだった。スマホの画像を見ながら右目を周辺を細かく描き終わると、突然左目を描き始める。その手に迷いはなく、目はスマホ画面とキャンバスを行き来する。ものの数十分で、キャンバスに入りきらないシマウマのアップが描かれた。
次回はこれに色付けをしていくのだという。

母親によると、MIKIさんはここに通い始めた当初は字を描くことくらいしかできなかったという。先にあげた幼児たちのようにスタッフがつき、サポートをしていった結果、好きなキャラクターの線画を描くようになり、だんだんと自分の画風が出てきて、画像を見ながら動物や電車を描くようになっていった。
「いまは教室がある日は、自宅で描きたい画像を決めてから来ます」。

「赤いライオン」AOAart 🄫MIKI(写真提供AOAart)


「自閉症の方が描くアートはエネルギーに溢れていて、うまく描かないといけないといった邪念がないところがいいんです。どの子もいたずら描きから始めて、特に絵の方向性なんかはない子が多いんですが、ここに来て、私たちスタッフから『いい色だね』とか『面白い構図』とか褒められることで、どんどん自分の絵が描けるようになっていくんですよ。大切なことは『存在の肯定』です。『あなたがそこにいることを大切に思っている』という気持ちで彼らの傍に座ることです。そして、彼らの絵の『なにが良いか』を見つけ出す目を養い、その良いところを心から褒めることです。根拠のない褒め言葉を発しないことです」とは、代表理事で日本画家の藤島大千さんの言葉だ。

MIKIさんも見た画像をそのまま写すわけではなく、意識せずに素直に自分が最も伝えたい部分を強調して描く。だから、例えばキリンを描くときに必ずしも首を長くして描こうとはしない。色付けも画像のとおりというわけではない。
「いろいろなしがらみや他人の評価は関係なく、嘘がないんですよね」(藤島さん)。

AOAartでは、自閉症の方々のアート作品を通じて、彼らの類稀な才能を伝えたり、自閉症の方々への理解を広めたいと考えているため、要望があれば一緒にアート作品を完成させるワークショップを開催したり、オフィスや店舗でアート作品の貸し出しや販売を行っていきたいと考えているという。

展示会、ワークショップの様子(写真提供AOAart)

(写真提供AOAart)

Text&Photo=ホシカワミナコ

ホシカワミナコ
sweet heart project 実行委員
(フリーランスエディター・ライター)

参考

一般社団法人AOAart
Webサイト https://aoaart.or.jp/

Autistic or Artistic?=自閉症か、アートか?
AOAartは、この問いを原点に世界各地の仲間とともにアートを通じた様々な支援活動をしています。はじまりは2008年、北京の美術大学の若いアーティストたちが自閉症の人たちの創るアートに触れた時の感動でした。そこから芽生えた支援の輪が、韓国、イギリス、そして日本へと広がり、2014年に一般社団法人AOAartを設立しました。自閉症者のアート活動を支援するワークショップを月一回のペースで定期開催し、それぞれの個性を生かしながら質の高い作品を制作しています。また、展覧会やイベントの開催を通じて広く社会へと発表しています。